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10年夢blog 第6回 [GBA作品(小説)]

10年夢blog 第6回

「寒中見舞いの時期だが、あけましておめでとうございます、と例年通り言っておいて」
 年が明けてしばらくしてから、俺たちはやっぱりいつもの喫茶店に入った。
「何だか繁盛しているらしいな。うちの育児日記は一日10人も来ないぞ」
 猛は苦笑いしながらそう言った。うちの愛娘よりもお前の妄想に人気があるのが気に食わん、と言外に言っているような気がしないでもない。
「ただ、俺も今までのようなかたちでは更新できないようなんだ」
「おお。それは良かった。夢のせいにするのを止めるのか」
「むしろ逆だ」
 猛がアメリカンの入ったカップを落としそうになっていた。でも店内に「ソー・ワット」が流れていたこともあり、お構いなしに続ける。
「ネタにする夢を、最近見なくなったんだよ」
 そう、なぜか最近俺は夢を見なくなっていた。見なくなっていた、というと間違いかもしれないな。見ても忘れているのかもしれないから。「起きても覚えている夢」を見なくなっていた、というのが正解か。
 夢を見るのは眠りが浅いとき、というのは学術書のレベルでもバラエティ的情報番組のレベルでも聞くけれど、多分それは真実なのだろう。いつの間にか、以前とは比べものにならないくらい寝付きが良くなっていたし、眠りも深くなったような気もするし、寝覚めも良くなっていたように思う。
「夢のことは知らないが、そういった寝付きや寝覚めの良さは起きているときの生活に影響されるからな」
 と猛は珍しく心理学科出身らしいことを言う。ごもっとも。
 そうなんだよ。起きているときのストレスも減ったかもな。別に正社員への距離が縮まったことなどないし、相変わらず待遇は悪いし、新しい資格が手に入ったわけでもない。
 いや、体を動かしたり芸術に打ち込んだりとかやった方がずっと健康的なのは分かっている。でも何もせず溜め込んで燻ってしまうよりはマシだと思っている。たとえ猛には夢のせいにするのは止めろとこの先何年言われることになろうとも。
「消極性や妄想癖と一緒にblogを卒業しようという発想にならないのかねチミィ」
「ならんな。今後は過去のネタで続けようと思うんだ」
 再び猛がカップを落としそうになった。でも、いいのだ。So what?


以前見た夢:1/17
 街角で号外を配っているのでもらってみる。号外のくせに「ごうか7だいふろくつき!」とか書いてある。俺が子供の頃に読んでいたTV系雑誌のように。しかも夢の中の俺は何の疑問を持たずその号外を折ったり丸めたりなんだりしているうちに、あら不思議、紙はミケランジェロのダヴィデ像になってしまった。残り6つの付録が何なのかという疑問など持つことなく、俺はその像を眺めていたが、そのうち雨が降ってきても眺めていただけだったので号外から生まれた像はふやけてしまった。

その日起きたこと。
発注における交渉事で、攻め時に攻めこむのを躊躇していたら相手のペースに巻き込まれてしまった。


 というわけで過去のネタに加え、その日はどうなったかという結果も掲載することにした。どんなコメントが付くのだろう。
 多分そのうちあのバスに乗り遅れた夢もこうやってネタにして笑い飛ばせるときが来るんじゃないだろうか。
 そう考えると、このblogを初めて良かったと思う。例え他の人間が何を言おうとも。
 その何か言ってくる人間の最たるものである猛には、しかし感謝せねば。
 そうか、10年の付き合いか。あの時に一緒にブラスバンドで演奏したメンバーは、その10年のうちにほとんど会わなくなったもんな。正月に出世頭の新田には会ったけど、忙しいらしく余り話す時間がなかったし、何より正月早々疲れた顔をしていた。休みたいのだろう。なんだかこちらも気を遣い、早めに切り上げた。
 社会人になってからの友人達も、俺がリストラされてからはなかなか会う機会がない。
 猛だって別に暇でもないし、会っても説教と娘自慢以外話題はないはずなのだが、それでもありがたいものなのだなあ。
 そんなことを考えていたら、机のペン立てに突き刺していたドラムスティックが目に入った。パーカッションをやっていた俺が使っていたものだけど、そのスティックにはびっしりと名前が寄せ書きしてある。こんな書きにくい形状のものによくもまあ。
 卒業記念だっけか?そもそもこれ、何で一本しかないんだ。何でもらったんだっけか。
 まあいい。何が動機であるにしろ、あの時の仲間が残してくれたものが今もある、それだけでも嬉しい。

 などと思っていたら、異変が起きた。

(続く)


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