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10年夢blog 第4回 [GBA作品(小説)]

10年夢blog 第4回

「夢想が妄想になってきたのか」
 数日後にまたジャズ喫茶で会った猛は、その話を聞いて開口一番そう言った。
「そうは言っても気になったんだよ、多分あれは柿本なんじゃないかって」
「そっちじゃなくて、また夢のせいにしていることの方なんだが。ニアミスがどうした。聞けなかったんじゃないのか」
「だって仕事中の人間に『あの、昔会ったことありませんか』なんて聞けるか。80年代のナンパじゃあるまいし」
「言い訳だ。本当に探求心があるなら四の五の言わずに聞けばいいだろ。口でも筆談でも何でもいいから。結局行動力がないから夢に言い訳を求めるんじゃないのか」
 店内のBGMにてチャールズ・ミンガスのベースがフォーバス知事に怒りを表明している。猛の説教とのアンサンブルは相性抜群だった。
「結局大学を出て10年経ってもそういうところは変わらないんだ」
「いや、違うんだって、いつまでも夢にあたって済むなんてこの歳じゃ思っていないんだよ。そう、それでその夢の話で思い出したけど、実は始めたん」
 自分にしては欠点を前向きに昇華するプランを話そうとしたのに、猛はプランのプも言う前から話題を変える。
「もういい、やっぱり同じじゃないか。夢の話しは止め止め。柿本かどうかの話しに戻—る」
 俺は渋々流れに従った。いつも流れに逆らえない俺は、多分鮭に生まれ変わったら故郷に帰れぬまま一生を終えるのだろう。
「柿本は学部を出ても大学院に進んだから、この街にいたっておかしくないけど」
「サックスパートでうちの大学の院に行ったのはアルトの沼田だろ?柿本は就職組だったと思うけど」
「よく覚えてるな。お前当時あの子好きだったんだっけ」
「いやー違うな」
 自分でも不思議なことに、ムキになって否定することもなく、動揺もなかった。何だろうな。話が面白い方向に進まないじゃないか。
「何だ、話が面白い方向に進まないじゃないか」
 こういうときだけ猛と意見が合うのかな。ともかく。若い頃、と言うと大雑把か。それこそ10年くらい前まではそれこそストーカー的な熱情すら沸くくらい好きな子ができたらのめり込んだだろうし、例えば時が経った今にこういう質問をされたら31歳なりに動揺もするだろう。
 そんな気恥ずかしい思いもせずにいられるのは、別に彼女をどうとも思っていなかったこともなかったということなのだろう。大体、4年間一緒のサークルにいてろくに話したこともなかったのにな。
 じゃあ何で彼女の印象を持った人を見つけてあんな正体解明に躍起になったのか?そんなに彼女の印象が残るほど強烈な関わり方をしたか、俺は。なんか一夜の過ちでもしたか。いや、そんな覚えはない。俺は呑んだらすぐ眠くなってしまう人間だから。そういうときは夢も見ない。
「また夢でも見ているのか」
 笑えない猛の言葉で我に返る。何だっけ、柿本の話だけどまあいいや。だから俺はさっき言おうとした話しに戻したんだ。
「いいや今は見ていない。見た夢は記録に残すことにした」
「記録って、ノートにでもつけたのか」
「いいや、お前が勧めてくれたんだろ、blogにだよ」

(続く)


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